このサイトでは子供の英語教育に取り組む親御さんを対象に、
英語教育に役立つようなノウハウやアイデアなども、色々な角度から発信させて頂いております。
そして、この記事では、第二言語習得のプロセスについて提案されているモデルの中から、Gass(1997)による第二言語習得の認知プロセスに基づいて、子供の英語教育の際に活かせるポイントをまとめて紹介していきます。
親の経験に基づいた教育ももちろん効果的ですが、より幅広く英語教育に関わる教養を親が持っておくことで、お子さんへの英語指導にも活かせるポイントがたくさんあるはずです。
是非一読ください。
この記事の内容
第二言語習得の認知プロセスとは?
第二言語が全く分からない状態から、英語を身につけていくプロセスにおいて、子供たちの頭の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか。
この頭の中で起こっている事が、この記事で紹介する「第二言語習得の認知プロセス」です。
以下の図に示すように、第二言語習得のプロセスにおいて子供の頭の中では、
インプットへの気づき・理解から始まり、インテイクという知識を取り組むプロセスを経て、自動的にアウトプットできるようになるまでの一連の流れが起こっています。
(図) 第二言語習得の認知プロセス(Gass, 1997等に基づく)
この流れに沿って、英語を学習することによって効果的かつ効率的な英語の習得をすることが出来ると考えられているのです。
そこで以下では、このプロセスにおける
①インプット
②インタラクション
③アウトプット
の各段階において、子供の英語教育に活かせるポイントを紹介してきます。
英語のインプットの際のポイント
英語の習得において大切なことは、継続的に良質な英語に触れるということがなによりも欠かせません。
このインプットの質と量が伴うことで、先ほどの図でもあるように、インプットからの気づき・理解が効果的に促されます。
インプットは理解可能である必要がある
ただ英語のインプットと言えども闇雲に情報を取り入れればいいというものではありません。
大切なことは、子供が英語に触れる際にその英語が意味するところを理解しておく必要があります。
ただ聞き流していれば英語が身につくというわけではありません。
また理想としては、現在の能力で理解可能なレベルよりも少し上のレベルでのインプットをさせてあげると言語習得のためには効果的です。
つまり、話の内容はおおむねわかるけれども、まだ知らない語彙や文法がすこし入っているというレベル感がベストです。
形・意味・機能のつながりの理解を伴うインプット
インプットの理解においてもう一つ重要なポイントは、
音声や文字、文構造などの「形」(form)と、
それが表す「意味」(meaning)、
そしてその言語項目が果たす「機能」(function)
の3つのつながりを理解する事が大切です。
例えば、I can swim very well. という場合には、この文の音と「〜できる」という意味、そして「自分の能力を他者に伝える」という機能が果たされることを把握する必要があります。
特に、文がもつ機能面を理解することが特に重要で、そのためには親が子供と接する際に、実際にそれを使ってなんらかの意味ある機能を果たしているのを見せるのが効果的です。
インプットに触れる頻度を増やす
上記のようなインプットを質の高いインプットとしたら、今度は量の面からのアプローチが必要で、理想的には毎日の継続的な取り組みの中で行えると良いでしょう。
実際、何度も何度も触れることで、記憶によく定着しますし、特定の文構造に繰り返し触れることで子供が自ら文の構造を分析的に理解していくようにもなります。
英語インタラクションの際のポイント
インタラクションとは、他者とのコミュニケーションのことです。
そして第二言語習得においては、他者との対話の中で英語を学ぶことは、学習効果を高める効果があります。
インタラクションの効果(意味交渉)
意味交渉とは、会話の中で言っていることが分からないなどの時に、
一方が一方に、発言の意味を訪ねたり、自分の言ったことを相手に伝えようと言い換えたりする努力のことを指します。
この意味交渉というインタラクションを経る中で、英語の学習プロセスは効果をますことが分かっています。
そのため、子供に英語でよく質問する習慣を身につけさせたり、親から子供へ英語で意味を訪ねたりすることを日頃から行うと良いでしょう。
インタラクションの効果(仮説検証)
英語の言語習得の度合いが未熟な場合、他者との英語を使ってのコミュニケーションは仮説検証の繰り返しです。
自分が相手に伝えたいことを英語で伝える際、その伝え方に自信がないものの、とりあえず発言してみて、相手が分かったようなら自分の英語は正しかったし、逆に相手が聞き直して来たりすれば、自分の英語は正しくなかったのであり修正する必要があります。
このように、自分の英語知識に関して、こう言えば伝わるだろうという仮説を立て、それに基づいて発話してみてその正しさを確かめることが仮説検証のプロセスです。
そして、英語の習得においては、この仮説検証のプロセスを経ることで学習効果があがります。
そのため、子供には、怖がらずに積極的に自分の英語知識を駆使して相手とコミュニケーションをとる姿勢を身につけさせるといいでしょう。
親としては、そんな子供の姿勢を応援してあげて、間違えてもいいんだよという態度を示すとなお良いでしょう。
英語アウトプットの際のポイント
アウトプットとは、英語を用いて質問したり、自分の意見を言ったりと、実際に口に出す行為をいいます。
言語知識の自動化を促す
単語や文法などの英語知識を実際の英語の使用の中で何度も使うことによって、その知識を自動的に使えるようになります。
この、自動的に使えるようになった状態を、言語知識が自動化した状態といい、英語知識の習熟度としては最高のものとなります。
逆に、知識としては知っているけれども実際には使えない状態は、自動化が進んでいないために起こる状態です。
英語を実際のコミュニケーションの現場でなめらかに使いこなせるようになるためには、この言語知識の自動化が必須です。
弱点の気づきと文法の意識化
そのほかにも、英語のアウトプットの過程で自分の英語知識で不十分な箇所を自覚することが可能です。
言おうと思っても言えない時、それは知識の習熟が不十分であったことを気づかせてくれます。
また、話す際にはもちろん英語の文法知識もフル動員されます。
しかし、英語で話すさいには、聞いたり読んだりするときとは少し異質の文法感覚に頼る必要があり、
その結果文法について意識的に考えることとなり文法への理解が深まるという効果も期待できます。
第二言語習得の認知プロセスの知識を活かした、効果的な英語教育をお子さんに
上記のような一連のプロセスを経て、子供の頭の中には、英語を使いこなすシステムが構築されていくのです。
そのため、親としては、子供がこのようなプロセスで第二言語である英語を身につけて行っているのだと知れることは、多くの気づきをもたらしてくれるかと思います。
例えば、英語を得意にさせることを目的に、ただ闇雲に英語を聞かせ続けてもいつまでたっても英語のシステムは子供の頭の中には構築されていきません。
さらに、英語の文法や単語などの知識ばかりを詰め込んだり、英語のアニメなどの動画を見せてばかりだとやはりこれも英語のシステムは子供の頭の中には構築されません。
大切なのは、子供がしっかり理解できるという意味で質の高い英語を日常習慣の中で継続的に触れさせるということ。
そして、さらに大切なことは、そこで学んだことを実際のコミュニケーションの中でどんどんと使っていくように子供を促すという事です。
親としては、日頃から子供に英語で質問をしてみたりしてもいいでしょう。
また、子供が英語で話す際に間違えることを恐れず、どんどんとチャレンジ精神旺盛に英語表現を発していけるような姿勢を身につけさせてあげられるような工夫を施してあげるといいですね。
まとめ
以上いかがでしたでしょうか。
もちろん、親御さん自身の経験に基づく英語教育も非常に大切になってきますが、
英語教育理論について知っておくだけで、日々の英語教育のやり方もより良い方向にもっていくことができるでしょう。
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