CEFR(セファール)をご存知ですか?
CEFRは世界中のテスト機関や大学が採用している、英語能力の評価基準の体系です。
日本でよく聞く英語の資格と言えば、英検・TOEFL・TOEICなどでしょう。
しかし、世界レベルで見た時、これらの資格はそれぞれ目的や内容が異なっている事から、英語能力を比較するための指標としては適切に機能しない事があります。
そこで、より統一的な基準で総合的な英語能力の測定を行うための基準としてCEFRがあるのです。
今まで日本では英語能力の評価に関する議論が不十分でしたが、新学習指導要領の適用に伴い、日本でもより統一的で客観的な指標としてCEFRが採用されます。
そのため、将来どのような基準で英語能力が測られていくのか、という事に関する知識と理解があることは、
親としては子供への英語教育を考えるにあたって非常に役に立つでしょう。
この記事では、CEFR(セファール)に関して網羅的な観点からの知識を共有しますので、一度は目を通しておくといいでしょう。
この記事の内容
CEFRとは?読み方は?英検との対応関係とは?
CEFRは、その読み方を「セファール」と言います。
これは、Common European Framework of Reference 頭文字をとった略語で、
日本語訳は「ヨーロッパ言語共通参照枠」です。
CEFRは、外国語の学習者の習得レベルを示す際にヨーロッパ全体で用いられているガイドラインで、その有効性から世界中で採用されている評価基準です。
その内容は、外国語の習熟度をA/B/Cの三段階で大きく分け、各段階をさらに2つに分け、A1・A2/B1・B2/C1・C2 というように計六段階で英語の能力のレベル分けを行います。
さっそく、一つずつその評価基準の内容を見ていきましょう。
□文部科学省 各試験・検定試験とCEFRとの対照表(2018年3月)より引用抜粋
CEFRの内容と英検・TOEIC・TOEFLとの対応関係。
□文部科学省 各試験・検定試験とCEFRとの対照表(2018年3月)より引用抜粋
□TOEIC® Program各テストスコアとCEFRとの対照表 より引用抜粋
A 基礎段階の言語使用者
A1・・・学習を始めたばかり、初学者(英検3級レベル、TOEIC120~)
- 頻出レベルの日常英会話と基本的な言い回しを理解し用いる事が出来る。
- 自己紹介が出来る・住んでいる場所や持ち物、個人情報について質疑応答が出来る。
- 難しい会話でも相手が分かりやすく解説を入れてくれたら理解し会話のやり取りが出来る。
A2・・・学習中・初級者(英検3級〜準2級レベル、TOEIC225~)
- 自分の身の回りの事に関する一般的な事なら理解し表現する事が出来る。
- 日常の範囲内なら他人と英語で情報交換をする事が出来る。
- 自分の背景や状況について、必要性に応じて相手に説明する事が出来る。
B 自立した言語使用者
B1・・・習得しつつある・中級者(英検準2級〜2級・TOEIC550~・TOEFL42-71)
- 身近な話題について、ニュースなどで主要点を理解することが出来る。
- 英語圏を旅行しているとして、基本的な事柄については対処する事が出来る。
- 個人的な話を、簡単な英文で表現する事が出来る。
- 自分の意見や計画に関して簡潔に述べる事が出来る。
B2・・・実務に対応できる・準上級者(英検準1級〜1級・TOEIC785~・TOEFL72-94)
- 自分の専門分野に関しては、複雑な議論でも内容を理解し自分の意見も発信する事が出来る。
- 英語ネイティブとも流暢に会話をする事が出来る。
- 広範囲な話題に対して、内容も理解したり、自分の意見を説得力をもたせて説明する事ができる。
C 熟達した言語使用者
C1・・・優れた言語運用能力を有する・上級者(英検1級・TOEIC945~・TOEFL95-120)
- 多ジャンルにわたって高度な内容を十分に理解する事が出来る。
- ネイティブとも流暢かつ自然な感じでコミュニケーションが出来る。
- 自分の立場に応じて、適切かつ柔軟な言い回しをする事が出来る。
- 複雑で高度な話題についても、内容を理解し、自分の意見を筋道たてて相手に分かりやすく説明する事が出来る。
C2・・・母語話者レベルの熟練者(英検・TOEIC・TOEFL全てで満点レベル)
- 読み聞きした事すべてを容易に理解することが出来る。
- 情報をまとめ、抽象化された論点を導き出し、自分の意見も言える。
- 流暢かつ自然にコミュニケーションがとれ、細かい意味やニュアンスの違いも理解し、考慮にいれた上で表現する事ができる。
親はCEFRに関する知識・理解を持っておくべき!!
文科省の英語教育目標と現実のギャップに関して
今後CEFRは、新学習指導要領が適用され新大学入試でも評価基準として採用されます。
大学入学共通テストでは、英検などの英語民間資格の点数が、CEFRでの評価基準に換算されて、大学側に送られるようになるのです。
一方で、日本の現状としては大卒者の80%が、CEFRでのA1からA2の範囲に止まっているのが現状です。
日本の大学受験では頂点レベルでもせいぜいB2の下限程度と言われています。
大卒者でA1~A2レベルなのだから中学・高校はもっとレベルが低い事になります。
いかに日本の英語レベルが低い基準にいるかが分かるかと思います。
しかしながら、国としては新学習指導要領の導入にあたり、
・中学卒業段階でA1以上
・高校卒業段階でA2からB1以上
これらの目標を学生全体の50%以上が達成できるようになることを目標に掲げています。
つまり、高校生の2人に1人は「自立した言語使用者」になる事を期待しているのです。
この目標を達成するためには、今の日本の英語能力の現状と比較すると相当な能力向上が必要不可欠であることは言うまでもありません。
大卒者のトップ層でも英語での質疑応答がなんとかできる程度の実力しかあわせ持たない今の日本において、
これからは高校生レベルで英語で自立して質疑応答できるようにしてしまおう!というわけです。
高い英語目標がもたらす危険性について
高い目標を掲げること自体にはなんら問題ありません。
教育計画の徹底した実施が実現すれば、未だ学歴至上主義的風潮の強い日本においては、
高学歴の切符を求める学生とその親御さん達が何とかしてでも、国の掲げる高い目標に食らいつこうと努力するでしょう。
しかし、こうした高い目標計画の影の部分にも教育者としては注目しておく必要があります。
それは目標が高ければ高いほど脱落者も増えるという事です。
もちろん、脱落者がなるべく出ないように、国も小学校から英語の教育を導入し、カリキュラムも更新されます。それでも、子供に求める難易度が上がっているという事は事実でしょう。
この教育上の変革はまだ始まったばかりで、教育の現場としては十分な知見が溜まっていない状況です。
生徒一人一人の固有の状況に応じた適切なフォロー体制を構築できるような、教える側の経験の母体が未熟なのです。
厳しい言いようですが、脱落者を拾い上げてあげるような教育体制には期待はしない方がいいでしょう。
だからこそ、親としては子供の将来のためにも、こうした評価基準には一定の理解をもっておくことは好ましいのです。
(*)成績一辺倒な教育はもちろんよくありません。
しかし、社会構造が成績によるふるい分けを許容している以上、成績の高低が子供の成長過程に及ぼす影響はかなり大きいと言えます。
CEFRを考慮にいれた英語の勉強方法について。
CEFRでは、リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングの四技能による均等な評価によってレベル分けがされます。
今までのような「読み」重視の英語教育とは異質な勉強方法が求められているのです。
各能力に関する個別具体的なノウハウなどは別記事に譲るとして、ここでは勉強方法の概略をおさらいする事にします。
このブログの趣旨は赤ちゃんから小学生の早期の英語教育なのですが、以下で述べる内容はどちらかというと中学以降の話になってしまいます。
しかし、子供教育としては、先を見越す事はとても大切です。
将来的にこれから述べるような対策を無理なく行えるようにするためには、幼少期から英語の基礎体力をつけておく事は大切です。
その意味で、子供のために、どのような事ができるだろうかという観点から先を読み進めて頂けると幸いです。
①英文法の勉強に関して
これからは、より実用性の高い英文法知識の習得が求められます。
今までのようなネイティブでも正確には把握していないような細かい文法知識は、今後は求められないでしょう。
基礎的な文法知識を、「学んでは使う、使っては直す」の繰り返しにより、実用レベルにまで持ち上げていくという事が大切になってきます。
「暗号解読のツールとしての文法知識」から、「しゃべって、書ける」実践的な文法学習が求められるようになるのです。
②英単語に勉強に関して
英単語の学習にあたっては、二つの観点が必要です。
それは、「認識のための語彙」と「運用のための語彙」です。
この2つの語彙は、触れる頻度や単語としての難易度、用途がそれぞれ異なります。
「認識のための語彙」は主に、リーディングとリスニングで必要になります。
「運用のための語彙」は主に、ライティングとスピーキングで必要になります。
従来の英語勉強との比較で言うと、「運用のための語彙」の習得が課題になってくるでしょう。
通学中に単語帳を熱心に開いて暗記するだけでは不十分で、実際に英語表現の中で「書けて」「話せる」レベルにまで熟達しないと「単語を覚えた」とは言えなくなってきます。
③リーディングの勉強に関して
リーディングに関しては、今までのような文法による暗号解読的な読解では対応しきれなくなります。
長文を早く読んでその要点を把握する速読・多読スキルが求められます。
英文を日本語に訳しながら読むようではダメですし、
英文を後ろから読むような読み方もダメです。
英語で英語を理解しながら読むような、「英語脳リーディング」なるものが求められます。
④リスニングの勉強に関して
リスニングの能力としては、正しく聴き取る静聴と、多ジャンルに渡る話を聞き取れるようになる多聴のスキルが大事になってきます。
静聴の勉強方法としては、聞き取った英語を文字に書き起こしていく「ディクテーション」という勉強方法が有効です。
また、多ジャンルの英語の聞き取りに対応できるためにも、多様な英語に触れておく必要があります。
そのためには、英語のドラマやTEDという英語プレゼンテーションを日頃から視聴するなど、多聴を取り入れた勉強が有効になってきます。
⑤ライティングの勉強に関して
まず英語テストの傾向としては従来のような英訳問題は出題されにくくなるでしょう。
それよりも、自分の考えをまとめて書く、「クリエイティブライティング」のスキルが求めら、「文章を読んで自分の考えを述べよ」という問題がよく出されるようになります。
そのためには、主張→理由→根拠・具体、というモデルに従って書く訓練が大切になります。
頭に浮かんだアイデアを簡潔にまとめるスキルと、英語の表現レパートリーをたくさんもつことが必要になってきます。
これは一朝一夕で身につくようなスキルではありませんから、とにかく最初は間違えてもいいから沢山書いていく事が大切です。
⑥スピーキングの勉強に関して
テスト内容としては、聞き取った内容に関して自分の意見を述べたり、文章を読んでそれに対する自分の意見を述べよ、といった問題が出題されます。
出題内容としてはライティングと似ていますが、違う点は、よりスピードと正しい発音が求められます。
ライティングでは推敲する時間的余裕が残されていますが、スピーキングでは瞬時に考えをまとめ、話しながらさらに調整していくという高度なスキルが必要です。
そのためには、とにかくたくさん喋る経験が必要でしょう。
無意識レベルで口から出せる英語表現のレパートリーを増やす必要があるのです。
勉強方法としては、
・オンライン英会話で英会話習慣をもつ
・音声を聞き取りながらリピーティング・シャドーイングをする
といった事が効果的になるでしょう。
CEFRを視野に入れた子供英語教育について
上で述べた、文法・語彙・リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングの各観点は、主に中学生以降の話でした。
それでは、将来を視野に入れた上で、早期からできる英語教育としてはどのようなポイントに着眼すればいいのでしょうか。
❶英語の反射神経と日常的な表現力を鍛えておく
形式ばった英語表現ではなく、もっとフランクに使えるような基礎的な日常英語表現をある程度身につけさせておくといいでしょう。
日頃から子供に英語で話しかけてみたり、簡単な会話は英語でもしてみるといった試みは効果的です。
英語で話しかけられたりした時に、とっさに英語で反応できるような反射神経と、日常的な短い英語の会話力も家庭で育てておくことができます。
❷正しい英語の音を聞き取れる耳を鍛えておく
小学校などで英語教育が始まってしまうと、どうしても英語の読み方をカタカナで覚えるような教材が配られてしまいます。
そもそも日本語の音が110個くらいしかないのに対して、英語の音は約1800個ほどもあります。
カタカナの音が英語の音と間違えて覚えてしまうと、あとあと修正が大変です。
英語の耳を鍛えておく勉強方法としては、
・フォニックス教材を使う
・ネイティブの発音練習を通じて発音の矯正をしてもらう
・英語の歌をたくさん歌う
といった方法が効果的です。
❸日常的な英語の語彙力を鍛えておく
学校での英語教育が本格化し始めると、必然的に英単語の暗記の宿題などが出始めます。
その時点ですでにある程度の英語のボキャブラリーの土台が出来上がっていると、暗記もスムーズにいきます。
英単語の暗記でつまづくという、初期段階での挫折を防げます。
といっても、「英単語の暗記をしましょう!」の合図とともに英単語を覚えるという勉強方法よりも、日常の中で英語名も一緒に覚えてしまうのがいいでしょう。
そのための勉強方法としては、
・子供がワクワクするようなピクチャーディクショナリーを買ってあげる。
・トイレなどに英語のポスターを貼っておく。
・子供が勉強感を意識しない程度に、日常の中で目に触れる物の英語名も一緒に教えて行ってあげる。
といったことが有効です。
「読む・聞く・書く・話す」の四技能において、CEFRでCレベル以上になってから最終的になってくるのは「語彙力」と「思考力」です。
そのためにも、小さい頃から英語のボキャブラリーを増やしていく習慣を身につけられるといいですね。
CEFRの理解の必要性
日本の英語教育への取り組みの姿勢の変化にともない、CEFRという英語能力評価基準の認知度はこれから間違いなく上がってくる事でしょう。
CEFRは、すでに世界レベルで通用する能力基準なので、その基準で英語力を測れるようにしておくことは、グローバルでのコミュニケーションスキルの証明になります。
将来、子供が高校・大学になって、世界の学校で学びたいと願ったとき、英語能力の証明は必須になるでしょう。
親としては、子供の将来の幸せ・成功を祈るからこそ、将来を見越して英語能力の向上を祈るのはもっともですし、そんな親御さんをもつ子供は恵まれています。
ただ、闇雲に英語能力の向上を期待していては、かえって子供を英語嫌いにさせてしまいかねません。
本質的ではない英語教育に陥る可能性もあります。
その意味で、成績への過度な執着(成績偏重主義)にならない範囲で、どのように英語能力が今後の社会で評価されていくのかという事に関して、正しい理解があることは大切です。
まとめ
以上いかがでしたでしょうか。
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